不動産を賃貸するときや売買するときは、仲介会社に依頼をします。その際に、決して安くはない仲介手数料が発生し、その仲介手数料には上限があるなどルールが定められています。

不動産の取引時は、この仲介手数料の仕組みを知っておかないと、知らないうちに損している場合もあります。特に売買時の仲介手数料は100万円を超えることも珍しくないため、事前に仲介手数料について理解しておきましょう。

そもそも仲介手数料って何?

仲介手数料とは、不動産の売買や賃貸が成立したときに、その取引を仲介してくれた業者に支払うお金になります。そのため、売買や賃貸取引が成立しない限りは、仲介手数料は発生しません。まずは、仲介手数料について、賃貸や売買に分けて解説していきます。

賃貸の場合の仲介手数料

賃貸の場合の仲介手数料は、貸主と借主の間で賃貸借契約が成立して引渡したときに発生します。つまり、物件案内をされただけだったり、申し込みキャンセルをしたりという段階では仲介手数料は発生しません。

売買の場合の仲介手数料

不動産売買の場合にも、原則は売買契約が成立して引渡したときに仲介手数料が発生します。しかし、契約がキャンセルされたときは少々複雑です。

仮に契約が「無効」であった場合は、売買契約自体が成立していないので仲介手数料も発生していません。また、契約成立後に契約が取り消されたら、契約は遡って「はじめから存在しないもの」とされます。そのため、「無効」と同じく仲介手数料は発生しません。

一方、「解除」の場合には少々ややこしいです。結論からいうと、この場合の仲介手数料の発生はケースバイケースであり、一般的に仲介業者に落ち度がない解除の場合には、仲介業者は媒介契約上では仲介手数料を請求することができます。

ただ、実際に全額請求するかなども含め、その取引によって異なるでしょう。とにかく、賃貸も売買も基本は取引が「成立」したときのみ仲介手数料が発生すると覚えておきましょう。

仲介手数料はいつ払うの?

仲介手数料の支払いタイミングは、一般的には以下の通りです。
・賃貸:賃貸借契約の成立時
・売買:契約時に半金で引渡し時に半金

厳密には、賃貸のときは賃貸借契約を結ぶ前に、前払い家賃などと一緒に支払う流れが一般的でしょう。売買のときは、契約時に半金支払いますが、買主からもらう手付金で相殺するので、実質手持ち金を失うことがないケースが多いです。

仲介手数料は誰が払うの?

さて、次に仲介手数料は誰に支払うか?という問題です。この点については、賃貸・売買でも異なりますし、取引形態でも異なってきます。

仲介手数料の流れ

一般的な仲介手数料の流れは以下の通りです。
・賃貸:入居者→仲介会社←大家
・売買:買主→仲介会社←売主

ただ、少々ややこしいのですが、賃貸も売買も仲介会社が1社でない場合があります。賃貸の場合は、入居者側に仲介会社が入り、大家側に管理会社が入っていることがあります。また、売買の場合には、買主側に仲介会社が入り、売主側に別の仲介会社が入っているケースがあるのです。

片手取引とは?

一般的に片手取引・両手取引は売買契約時に使われる言葉ですが、本質的な意味合いは賃貸時も同じです。この項で解説する「買主」を借主として、「売主」を貸主と置き換えてご理解ください。

片手取引は、前項で解説した「仲介会社が1社でない」というケースです。たとえば、Aさんが売主Bの所有するマンションを購入したとします。このとき、このマンションを売主Bが依頼している不動産会社X社が仲介をしているとします。

しかし、Aさんは必ずしもX社に問い合わせるわけではありません。仮に、Aさんが地元の不動産会社Z社に来訪し、色々な物件を見ていく中で、Bさんのマンションを見つけたとします。その場合は、Z社がX社に連絡するという流れになるので、Aさんが仲介手数料を支払うのはZ社です。

このように、買主と売主それぞれが別の仲介会社を通じて取引することを「片手取引」といいます。

両手取引とは?

一方、両手取引とは片手取引の逆です。前項の例でいくと、売主の仲介会社である不動産会社Z社が、買主も仲介するという形になります。このような状況だと、Z社は買主からも売主からも仲介手数料をもらえるので、単純に仲介手数料収入が倍になります。

賃貸の時は仲介手数料の上限が異なるので倍にはなりません。この辺りの詳細は後ほど解説します。

賃貸の仲介手数料の相場って?

さて、次に賃貸の仲介手数料相場をみていきましょう。またその後、賃貸時と売買時の仲介手数料の上限、実際に仲介手数料を計算する方法を解説していきます。

賃貸は家賃の1ヶ月分+消費税が相場

賃貸は家賃の1か月分に消費税が加算された金額が相場です。そのため、家賃10万円のときは、現在の8%の消費税を加算して108,000円が仲介手数料になります。

ただ、この金額はあくまで一般的な金額なので、詳細金額は物件ごとに確認しましょう。また、この金額には管理費などの共益費は含まれないという点も理解しておきましょう。

賃貸の仲介手数料の上限

賃貸の仲介手数料の上限は、貸主・借主から「合わせて家賃の1か月分」になります。つまり、家賃が10万円であれば、仲介会社に支払う仲介手数料は以下の3パターンのどれかになります。

①借主:10万円、貸主:0円
②借主:0円、貸主:10万円
③借主:5万円、貸主:5万円

ただ、「両手取引は倍額の仲介手数料をもらえる」といいましたが、賃貸の場合はこのようにそもそもの手数料額が決まっています。ただし、たとえば「借主:10万円、貸主:0円」のときに、貸主に広告料としていくらかの費用をもらっている場合もあるのです。

売買の仲介手数料の上限

売買の仲介手数料は、以下のように売買金額によって異なります。

税抜き売買価格 仲介手数料
200万円以下 売買価格×5%
200万円超400万円以下 売買価格×4%+2万円
400万円超 売買価格×3%+6万円

注意点は、上記で算出した金額に消費税がかかるということです。また、この計算で算出した仲介手数料は、あくまで請求して良い「上限金額」になります。つまり、その上限以下であればいくらであっても構わないということです。

仲介手数料の計算方法

賃貸時の仲介手数料の計算方法は非常に簡単で、仲介会社や管理会社と約束した金額で決まっています。たとえば、「仲介手数料:家賃1か月分」であれば、家賃額が上下しない限り、家賃の1か月分(+消費税)を支払えば良いのです。

一方、たとえば税抜き3,150万円の物件を売却した場合の仲介手数料は以下の金額です。
計算式:(3,150万円×3%+6万円)×消費税1.08=1,085,400円

仲介手数料無料のからくり

 

さて、最後に仲介手数料が無料になるカラクリを解説します。このカラクリは、賃貸と売買によって異なるので、この2つを分けて解説していきます。

何故無料にできるの?

賃貸の仲介手数料無料のカラクリに関しては、上述した「借主:0円、貸主:10万円」でお分かりいただけると思います。要は、借主は仲介手数料を無料にしているものの、仲介会社はしっかり借主から仲介手数料をもらっているということです。

もしくは、仲介会社がそのマンションの管理会社であり、一括してサブリースを請け負っているときなども仲介手数料は無料になります。サブリースを請け負っているということは、管理会社がそのマンションを一括で借り上げているということです。

つまり、借主からするとオーナーは別にいるものの、管理会社から転貸するという扱いになるので、「仲介」にはなりません。そのため、仲介手数料は発生しないということです。

不動産の売買時も本質的には同じです。「購入者の仲介手数料はゼロ」と謳っている物件は、売主から仲介手数料をもらっています。

仲介手数料は交渉できる?

結論からいうと、賃貸も売買も仲介手数料の交渉はできますが、交渉が成功する確率は決して高くはないでしょう。なぜなら、賃貸も売買も仲介会社は契約を成立させる過程で以下のような費用がかかっているからです
・広告費
・人件費
・維持費

売買時も仲介時も、ネットや紙媒体で購入者・借主を募集します。その広告には当然お金もかかっていますし、営業マンの人件費もかかっています。さらに、オフィスの賃料などをはじめとした維持費もかかっており、それら全ての費用は仲介手数料から捻出するのです。

そのため、仲介手数料を値引くということは、上記の費用負担が重くなってしまうため、仲介会社も簡単には応じることができません。仮に交渉するとしたら、早い段階で更に理由を添えて交渉しましょう。理由とは、「他社との比較」など、仲介会社が納得できる理由です。

仲介手数料無料はお得なのか?

仲介手数料無料は、賃貸の場合はお得であり、売買の場合はケースバイケースと言えるでしょう。厳密にいうと、賃貸の場合は借主はお得であり、売買の場合は買主はお得なものの、売主はケースバイケースです。

というのも、売買の場合には前項で解説した「広告費」や「人件費」を削らざるを得ないからです。そうしないと、仲介手数料が減額した分、そのまま収益が減ってしまい最悪の場合には赤字になってしまいます。

そのため、広告や人件費を削られる売主はデメリットがあります。一方、買主は仲介手数料が無料になった分だけお得です。

しかし、賃貸の場合には基本的には、借主の仲介手数料がゼロでも仲介会社の収益は変わりません。売買の場合には買主からも売主からも「3%+6万円」という仲介手数料がもらえますが、賃貸の場合はあくまで「合計で1ヶ月分」だからです。

そのため、賃貸で貸主の仲介手数料が無料の場合でも、仲介会社は広告費や人件費を削る必要はないのです。

最後に

このように、仲介手数料は賃貸も売買も少々複雑と言えるでしょう。特に、仲介手数料はあくまで上限であり、規定通りに支払う義務はないという点は覚えておきましょう。ただ、仲介手数料を無理に値引くと、売買時の売主にはデメリットがあるので、慎重に行うことをおすすめします。